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泉佐野市はなぜふるさと納税で日本一なのか

泉佐野市はなぜふるさと納税で日本一なのか

2026-09-28 更新

令和7年度に受入額230.4億円・135.2万件で全国1位になった大阪府泉佐野市。平成24年度の取り組みの強化から、平成30年度の497.5億円、指定制度からの除外と最高裁の判決、熟成肉と精米の基準改正、費用の内訳、市の財政と特別交付税の裁判までを、総務省・裁判所・市の資料で順にたどります。

令和7年度(2025年度)のふるさと納税の受入額で、全国の市区町村の1位は大阪府の泉佐野市でした。受入額は230.4億円で2位の北海道白糠町を7.1億円上回り、件数の135.2万件も全国1位です。1件あたりの寄附額は17,044円と全国の市区町村の平均22,185円より少なく、小口の寄附を数多く集めた形になっています。市長は令和元年度以来6年ぶりの1位について、新しい地場産品をつくる「#ふるさと納税3.0」を使った市内の事業者と、寄附者の支えによるものだとコメントしました。

平成24年度からの年表

市がふるさと納税の取り組みを強化したのは、千代松大耕市長が就任した翌年の平成24年度です。市の説明では、関西国際空港の開港(平成6年)に合わせた事業で地方債の残高が777億円まで増え、平成20年度の決算で将来負担比率が393.5%となって財政健全化団体になっていました。市が挙げる取り組みは、返礼品の充実、寄附の受付窓口の強化、事務の効率化、直営サイトによる手数料の削減です。平成26年度には関空を拠点にする航空会社Peachのポイントを返礼品に加え、受入額は前年度の0.46億円から4.68億円になりました。

年度 受入額 全国順位 できごと
平成24年度(2012) 0.19億円 − 取り組みを強化
平成26年度(2014) 4.68億円 11位 Peachのポイントを返礼品に
平成29年度(2017) 135.3億円 1位 全国で初めて100億円を超える
平成30年度(2018) 497.5億円 1位 2〜3月にアマゾンギフト券を上乗せ
令和元年度(2019) 185.0億円 1位 4〜5月に集め、6月から制度の対象外に
令和2年度(2020) 22.5億円 52位 最高裁の判決を経て7月に指定、11月に「#ふるさと納税3.0」
令和3年度(2021) 113.5億円 5位
令和5年度(2023) 175.1億円 3位 10月から熟成肉と精米に原料の産地の条件
令和6年度(2024) 181.5億円 3位
令和7年度(2025) 230.4億円 1位 件数も1位

平成20年度からの受入額に、その年の出来事を重ねると次のようになります。

受入額と出来事(平成20〜令和7年度)
0100億円200億円300億円400億円500億円6年ぶりの1位熟成肉・精米の基準改正最高裁で勝訴7月に指定11月「#ふるさと納税3.0」6月から制度の対象外アマゾンギフト券の上乗せ全国1位Peachのポイント取り組みを強化平20平21平22平23平24平25平26平27平28平29平30令元令2令3令4令5令6令7全国順位11位1位1位1位52位5位3位3位1位
0100億円200億円300億円400億円500億円123456782021222324252627282930元234567全国順位11111525331平成令和
  1. 平成24年度 取り組みを強化
  2. 平成26年度 Peachのポイント
  3. 平成29年度 全国1位
  4. 平成30年度 アマゾンギフト券の上乗せ
  5. 令和元年度 6月から制度の対象外
  6. 令和2年度 最高裁で勝訴、7月に指定、11月「#ふるさと納税3.0」
  7. 令和5年度 熟成肉・精米の基準改正
  8. 令和7年度 6年ぶりの1位

平成30年度の497.5億円はどう集まったのか

平成30年度の受入額497.5億円は、全国の市区町村の合計5,084.7億円の9.8%にあたります。総務省はそれまでに、2017年4月の総務大臣の通知で返礼割合を3割以下にするよう求め、2018年7月には通知に沿わない返礼品を送る12団体として泉佐野市などの名前を公表していました。同じ年の9月には総務大臣が、過度な返礼品を送る団体を対象外にできるよう、制度の見直しを検討すると表明しています。

最高裁の判決が認めた事実によれば、市が2018年11月から2019年3月までに受け取った寄附は約332億円で、この間の返礼品1,026品目はすべて返礼割合が3割を超え、平均は43.5%でした。1,026品目のうち745品目は地場産品ではありません。市は2018年12月と2019年2〜3月に、返礼品に加えて寄附額の3〜20%のアマゾンギフト券を付け、2019年4〜5月にはこの割合を10〜40%に上げています。2019年2〜3月のキャンペーンについて市長は、直営サイト「さのちょく」だけで行い、ポータルサイトの手数料の分を寄附者に還元していると説明しました。

指定から外れた理由と最高裁の判断

2017年4月の通知から2020年7月の指定まで、総務省と市の動きは次のように続きました。

総務省と泉佐野市の動き(2017〜2020年)
2017年2018年2019年2020年総務省2017年4月返礼割合3割以下の通知2018年9月制度の見直しを表明2019年5月14日不指定を決定2020年7月3日告示を改めて指定2018年7月12団体の名前を公表2019年3月改正地方税法が成立2019年10月3日不指定を維持泉佐野市2018年11月〜2019年3月1,026品目すべて3割超アマゾンギフト券3〜20%2019年9月3日係争処理委員会が再検討を勧告市の申し出を受けて裁判所2020年1月30日大阪高裁で敗訴2020年11月「#ふるさと納税3.0」2019年4〜5月ギフト券10〜40%2019年11月大阪高裁に提訴裁判所2020年6月30日最高裁で逆転勝訴裁判官全員一致総務省泉佐野市2017年2018年2019年2020年2017年4月返礼割合3割以下の通知2018年7月12団体の名前を公表2018年9月制度の見直しを表明2018年11月〜2019年3月1,026品目すべて3割超アマゾンギフト券3〜20%2019年3月改正地方税法が成立2019年4〜5月ギフト券10〜40%2019年5月14日不指定を決定2019年9月3日係争処理委員会が再検討を勧告市の申し出を受けて2019年10月3日不指定を維持2019年11月大阪高裁に提訴裁判所2020年1月30日大阪高裁で敗訴裁判所2020年6月30日最高裁で逆転勝訴裁判官全員一致2020年7月3日告示を改めて指定2020年11月「#ふるさと納税3.0」

2019年3月に指定制度を定めた改正地方税法が成立し、総務大臣は5月14日、6月1日からの指定の対象に泉佐野市を入れないと決めました。指定されなかったのは泉佐野市と静岡県小山町、和歌山県高野町、佐賀県みやき町の4市町で、申出書を出さなかった東京都も外れています。理由は、申出書類で基準への適合が示されていないことのほか、2018年11月1日以降に趣旨に反する方法で著しく多額の寄附を受け取ったこと、いまの取り組みから見て返礼品の基準に合うと認められないことでした。市は国地方係争処理委員会に審査を申し出て、委員会は9月3日に再検討を勧告しましたが、総務大臣は10月3日に不指定を維持すると通知しています。

市は2019年11月に大阪高裁へ提訴し、高裁は2020年1月30日に請求を棄却しました。最高裁第三小法廷は2020年6月30日にこの判決を破棄し、不指定を取り消しています。最高裁は、法律の施行前の寄附の集め方を指定の条件にした告示の部分は、地方税法が総務大臣に任せた範囲を超えて無効だと判断しました。施行前は返礼品を規制する法令がなかったので、そのころのやり方から施行後も基準に合わない返礼品を出すと推し量ることはできない、ともしています。判断は裁判官全員一致で、林景一裁判官は補足意見で、市の募集のやり方を理由に、市が勝つ結論には「居心地の悪さ」を覚えるとしつつ、こうした基準を告示で定めるなら法律で明示して委任しておく必要があったと述べました。

総務大臣は判決の3日後の2020年7月3日に告示の該当部分を削り、泉佐野市・高野町・みやき町を指定しました。高市早苗総務大臣は会見で、指定の効力は令和元年6月1日にさかのぼると説明しています。令和2年度の受入額は22.5億円で、全国52位でした。

復帰したあとに始めたこと

市は制度に戻った2020年11月に「#ふるさと納税3.0」を始めました。市内の事業者が新しい地場産品をつくる計画を出してクラウドファンディング型で寄附を募り、目標に届くと寄附金の40%を市が立ち上げの補助金として交付し、できた品物を寄附者に返礼品として送るしくみです。市の発表では、集めた額は2020年度の約5.5億円から2024年度の約64.1億円まで増え、5年間の累計は185億円を超えました。

市のページ(2026年9月)によれば、さのちょくには返礼品の代わりに期限のない「さのちょくポイント」を受け取る方法もあり、寄附額5千円で1,500ポイントが付きます。市はこのポイントを市内の飲食店や宿泊施設、美容院などでQRコード決済に使う「さのPay」を設け、取扱店を募っています。令和3年度の受入額は113.5億円で、全国5位になりました。

熟成肉と精米の基準改正

総務省は2023年6月27日の告示で地場産品の基準を改め、区域内で「食肉の熟成」や「玄米の精白」をした品は、原料が同じ都道府県産のものに限りました。2023年10月1日以降の指定から適用され、総務省のQ&Aは、輸入した海外産の牛肉を区域内で熟成させたものを認められない例に挙げています。関西テレビは2023年9月、市の主力だった熟成肉と精米が10月から返礼品の対象外になり、市は2023年度に32億円の減少を見込んでいると報じました。

受入額は令和5年度175.1億円(全国3位)、令和6年度181.5億円(同3位)、令和7年度230.4億円(1位)と推移しています。市の実績報告書によれば、令和5年度の「#ふるさと納税3.0」には、熟成肉を除く牛タンやベーコンなどの食肉加工、サーモン、泉州タオル、ビールの醸造所の誘致など20件あまりのプロジェクトが並びました。令和7年度の受入額は前年度より48.9億円多く、件数は22.1万件増えています。全国の並びは受入額が多い街の一覧に載せています。

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230.4億円のうち費用はいくらか

令和7年度に市が寄附を集めるのに使った費用は108.6億円で、受入額の47.1%でした。内訳は返礼品の調達26.6%、送付5.9%、事務など11.4%で、全国の市区町村の合計(調達26.6%、送付5.7%、事務など13.5%、全体48.0%)と比べると事務の割合が低く出ています。費用のうちポータルサイトの運営事業者に払った額は44.2億円(受入額の19.2%)で、全国の市区町村の合計の18.1%に近い割合です。費用の5割の基準は募集費用5割の記事で、全国の順位は費用割合が高い街で扱っています。

市の財政に何が起きたのか

令和6年度の決算では、歳入902.4億円のうち寄附金が184.2億円で、20.4%を占めました。市は寄附金を分野ごとの基金に積み立てて翌年度の予算で使い、令和5年度の寄附175.1億円は令和6年度の事業に充てたと報告しています。積立金の残高は、平成26年度以降では平成30年度末の287.2億円が最も多く、令和6年度末は208.1億円でした。

市の財政状況の推移表では、将来負担比率は平成20年度の393.5%から平成30年度に35.7%、令和5年度に8.7%まで下がり、令和6年度は算定上の負担がない「−」になりました。地方債の残高は平成23年度の820.1億円から令和6年度の554.6億円に減っています。令和7年度の受入額から費用を引いた額は121.8億円で、市の住民がほかの自治体へ寄附して減った住民税(令和8年度課税)は6.8億円です。

特別交付税をめぐる裁判

市の推移表では、特別交付税は平成30年度の4.97億円から令和元年度の0.53億円に減りました。総務省が特別交付税の省令に、ふるさと納税の寄附金収入が多い団体の額を減らす規定を置いたためで、市はこの減額の決定の取消しを求めて国を訴えています。大阪地裁は2022年3月に市の訴えを認めたと日本経済新聞が報じ、大阪高裁は2023年5月10日、交付税をめぐる争いは裁判で扱う「法律上の争訟」に当たらないとして訴えを却下しました。最高裁第一小法廷は2025年2月27日、この訴えは法律上の争訟に当たるとして、審理を高裁に差し戻しています。

差し戻し後の大阪高裁は2025年10月9日、寄附金収入を理由に省令で特別交付税を減らすのは地方交付税法の委任の範囲を超えるとして、国の控訴を棄却したと時事通信が報じました。市長は同じ日のコメントで、国が上告せずに減額の決定を取り消すことを望むと述べています。国がその後に上告したのか、判決が確定したのかは、この記事を書いた2026年9月28日の時点で確かめられていません。市は同じ省令によって、令和5年度と令和6年度にも3月分の特別交付税を減らされたと公表しました。

出典: 受入額・件数・費用は総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」(令和8年度実施、各年度の受入額は平成20年度から。https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/archive/ )、令和6年度の決算は総務省「市町村別決算状況調」(https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/r06_shichouson.html )によります。指定制度の経過は総務省「ふるさと納税指定制度における令和元年6月1日以降の指定等について」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20190514_02.pdf )、国地方係争処理委員会の勧告(https://www.soumu.go.jp/main_content/000642334.pdf )、総務大臣の通知(https://www.soumu.go.jp/main_content/000647618.pdf )、高市総務大臣の会見(2020年7月3日、https://www.soumu.go.jp/menu_news/kaiken/01koho01_02000928.html )、判決は最高裁令和2年6月30日第三小法廷判決(https://www.courts.go.jp/hanrei/89537/detail2/index.html )、大阪高裁令和2年1月30日判決(https://www.courts.go.jp/hanrei/89257/detail4/index.html )、大阪高裁令和5年5月10日判決(https://www.courts.go.jp/hanrei/92133/detail2/index.html )、最高裁令和7年2月27日第一小法廷判決(https://www.courts.go.jp/hanrei/93824/detail2/index.html )です。基準の改正は令和5年総務省告示第244号(https://www.soumu.go.jp/main_content/000889285.pdf )とQ&A(https://www.soumu.go.jp/main_content/000893395.pdf )、市の説明は泉佐野市の発表(2025年4月2日 https://www.city.izumisano.lg.jp/material/files/group/19/PR20250402.pdf 、2025年8月22日 https://www.city.izumisano.lg.jp/material/files/group/19/PR20250822.pdf 、2025年4月14日 https://www.city.izumisano.lg.jp/material/files/group/19/PR20250414-1.pdf )、市長コメント(2019年2月12日 https://www.city.izumisano.lg.jp/kakuka/seicyou/furusato/menu/izumisano_furusatotax/izumisano_furusatotax_keisou/1549948840416.html 、2025年10月9日 https://www.city.izumisano.lg.jp/material/files/group/19/PR20251009.pdf 、2026年7月31日 https://www.city.izumisano.lg.jp/material/files/group/19/PR20260731-2.pdf )、さのPayの案内(https://www.city.izumisano.lg.jp/kakuka/seicyou/furusato/menu/sanopay.html )、財政状況の推移(https://www.city.izumisano.lg.jp/material/files/group/9/01_R6zaiseizyoukyousuii.pdf )、令和5年度の寄附金活用実績報告書(https://www.city.izumisano.lg.jp/material/files/group/71/R5_kifuhoukoku.pdf )を参照しました。報道は関西テレビ(2023年9月27日、https://www.ktv.jp/news/feature/0926-hurusato/ )、時事通信(2025年10月9日、https://www.jiji.com/jc/article?k=2025100900677&g=soc )、日本経済新聞(2022年3月、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF036ZN0T00C22A3000000/ )です。

ほかの読みもの

この記事は総務省の公開資料をもとに書いています。控除の適用は一人ひとりの事情で変わるので、具体的な金額はお住まいの市区町村の案内が確かです。