
別海町のふるさと納税は、なぜ5年で141倍になったのか
2026-09-29 更新
令和7年度に受入額211.5億円・133.8万件で全国4位、住民1人あたり153.9万円で全国2位になった北海道別海町。2016年4月の返礼品の開始から、ふるさとチョイスへの掲載、令和3年度の返礼品の拡充、制度の改正、費用の内訳、子ども・子育て応援基金、基金と町の財政までを、町と総務省の資料で順にたどります。
令和7年度(2025年度)のふるさと納税の受入額で、北海道の別海町は211.5億円を集め、泉佐野市(230.4億円)、白糠町(223.3億円)、都城市(216.5億円)に次ぐ全国4位でした。件数は133.8万件で、1件あたりの寄附額は15,816円と、全国の市区町村の平均22,185円を下回ります。令和2年度の受入額は1.50億円で、5年で141倍になりました。令和2・7年度とも受入額が1億円以上だった869団体の中で最も大きな伸びで、2番目の福岡市は31.4倍です。町の人口は13,748人(令和8年1月1日)で、住民1人あたりの受入額は153.9万円と、白糠町に次ぐ全国2位でした。
平成20年度からの年表
町が「別海町ふるさと寄附条例」を定めたのは2008年9月で、平成20年度は7人から41万円の寄附がありました。寄附者に返礼品を送り始めたのは2016年4月です。平成28年度の受入額は174万円(71件)で、前年度の202万円とほとんど変わっていません。町は2017年11月の広報で、ポータルサイト「ふるさとチョイス」を使い始めたことを知らせ、返礼品を出す事業者を募りました。平成29年度の受入額は3,216万円(1,277件)で、前年度の約18倍になっています。
| 年度 | 受入額 | 全国順位 | できごと |
|---|---|---|---|
| 平成20年度(2008) | 41万円 | 1,113位 | 9月に寄附条例を定める |
| 平成28年度(2016) | 174万円 | 1,567位 | 4月に返礼品を送り始める |
| 平成29年度(2017) | 3,216万円 | 984位 | ふるさとチョイスに載せる |
| 令和元年度(2019) | 5,528万円 | 960位 | 6月から指定制度(通常の指定) |
| 令和2年度(2020) | 1.50億円 | 761位 | ポータルと返礼品を見直す |
| 令和3年度(2021) | 24.6億円 | 62位 | 返礼品が1,800品を超える |
| 令和4年度(2022) | 69.4億円 | 12位 | 6月に返礼品が2,000品を超える |
| 令和5年度(2023) | 139.0億円 | 5位 | 子ども・子育て応援基金に20億円 |
| 令和6年度(2024) | 173.5億円 | 5位 | 小中学校の給食費を無償に |
| 令和7年度(2025) | 211.5億円 | 4位 | 4月に総合政策部を新設 |
平成20年度からの受入額に、その年の出来事を重ねると次のようになります。
- 平成20年度 寄附条例を定める
- 平成28年度 返礼品を送り始める
- 平成29年度 ふるさとチョイスに載せる
- 令和2年度 ポータルと返礼品を見直す
- 令和3年度 返礼品が1,800品に
- 令和5年度 子ども・子育て応援基金
- 令和6年度 給食費を無償に
- 令和7年度 総合政策部を新設、211.5億円で全国4位
令和3年度に何が変わったのか
町長は令和2年度の行政執行方針で、ポータルサイトの充実と返礼品の見直しによって実績が少しずつ積み上がってきたと述べています。町の広報に載った月ごとの寄附者は、2019年12月の延べ1,134人に対して2020年12月は4,190人で、令和2年度の受入額は前年度の2.7倍の1.50億円でした。
令和3年度の当初予算で町が見込んだ寄附金は1億5,010万円で、決算の24.6億円はその16倍です。町長はこの年度の行政執行方針で、ポータルサイトの拡充と返礼品を出す事業者の増加で寄附が伸びているとし、取り組みを強めるとしました。2021年4月の広報からは、問い合わせ先が「ふるさと応援・情報化推進室」になっています。広報に載った寄附者は2021年4〜6月で延べ4,588人で、年度の19.6万件の大半は7月以降に集まりました。
返礼品の数も増えました。町によれば、町内の事業者の協力で返礼品は2021年12月1日に1,000を超え、12月28日に1,800、2022年6月1日に2,000を超えています。増えた品として町は、野付半島の近くで獲れるホタテ、いくら、毛ガニ、別海和牛、町産のバターを使ったあんバターを挙げ、年末年始に生乳が余って捨てられるおそれがあると伝えられた2021年12月には、乳製品の返礼品を増やしました。
返礼品の送付などにかかる「ふるさと応援制度推進事業」の決算は、令和2年度の7,729万円から令和3年度に16.1億円になり、町は令和4年度の当初予算で寄附金を24.0億円と見込んでいます。北海道新聞は2026年7月、約1億5千万円だった寄附額が5年で200億円を超えたと報じ、理由として、返礼品で寄附を集めるだけでなく、産地としての魅力を伝えて町を応援する人を増やしてきたことを挙げました。
指定制度と基準の改正はどう響いたのか
2008年から2025年までの国の制度と町の動きを並べると、次のとおりです。
総務省が2019年5月14日に決めた指定では、返礼割合が3割を超える品や地場産品以外の品で多額を集めた43団体の指定が4か月に限られ、泉佐野市など4市町は指定されませんでした。別海町はどちらにも入らず、1年4か月の指定を受けています。
2023年10月からは、募集に付随する事務の費用も5割の基準に数え、熟成肉と精米には原料の産地の条件が付きました。町は10月1日から一部の返礼品の寄附額を上げましたが、ホタテは、中国が日本の水産物の輸入を全面的に止めたことを受けて生産者を支えるため、10月の間は据え置くと発表しました。町によれば、野付半島の周りで育つホタテは令和2年の漁業生産高が40.2億円で、町の漁業生産高の71.8%を占めます。令和5年度の受入額は前年度の2.0倍の139.0億円でした。
総務省は2024年6月の告示で、寄附にともなってポイントなどを出す事業者を通じた募集を、2025年10月から禁じました。令和7年度の別海町の受入額は前年度より21.9%多い211.5億円で、件数は29.1%増えています。全国の市区町村の件数の伸びは1.3%で、別海町の1件あたりの寄附額は令和6年度の16,749円から15,816円に下がりました。
返礼品は何で、だれが運営しているのか
町は返礼品を、生乳の生産量が日本一の乳製品やホタテ、ホッキ、いくらなどと説明しています。2026年9月28日に町が公表した地場産品の一覧には、「べつかいの牛乳屋さん」の牛乳や手作りバター、別海町で製造する森永乳業のクリームチーズが並びます。申し込みは、ふるさとチョイスや楽天ふるさと納税など30のポータルサイトで受けています。
問い合わせの窓口は「別海町ふるさと納税サポート室」で、ワンストップ特例の申請の受付はシフトプラス株式会社(大阪市)に委託しています。町は2025年4月、ふるさと納税の業務を強めることなどを目的に「総合政策部」を新設し、2026年8月7日にはシフトプラスと包括連携協定を結んで、寄附金の使い道を分かりやすく示すことや、プロジェクトごとに寄附先を選べるようにすることなどで連携するとしています。
いま多くの人が選んでいる品の顔ぶれは、楽天ふるさと納税の別海町のページに並んでいます。
別海町の返礼品を楽天で見る→訳ありのホタテ、別海牛の焼肉、いくらの醤油漬け、牛タン、秋鮭の切り身。2026年9月にレビューの多い順で上位だった顔ぶれです。211.5億円のうち費用はいくらか
令和7年度に町が寄附を集めるのに使った費用は105.4億円で、受入額の49.8%でした。
| 費用の区分(令和7年度、受入額に対する割合) | 別海町 | 全国の市区町村の合計 |
|---|---|---|
| 返礼品の調達 | 28.4% | 26.6% |
| 返礼品の送付 | 6.3% | 5.7% |
| 広報 | 3.6% | 0.7% |
| 決済 | 1.8% | 1.5% |
| 事務 | 9.7% | 13.5% |
| 合計 | 49.8% | 48.0% |
| うちポータルサイトへの支払い | 19.7% | 18.1% |
調達と送付は全国の合計をやや上回り、広報は7.5億円で、受入額に対する割合は全国の合計の約5倍です。広報のうち7.3億円は、ポータルサイトの運営事業者に払われています。ポータルサイトへの支払いは全体で41.6億円です。受入額から費用を引いた額は106.1億円で、町の住民がほかの自治体へ寄附して減った住民税(令和8年度課税、町民税と道民税の合計)は891人分の7,114万円でした。5割の基準は募集費用5割の記事で、上位の街どうしの比べ方は集め方の型の記事で扱っています。
寄附は何に使われているのか
令和7年度に寄附者が選んだ使い道は、総務省の分類で地域・産業振興が60.2%、子ども・子育てが16.0%、分野を指定しないものが12.2%でした。町は寄附金を返礼品代や送料などの経費に充て、残りを「ふるさと応援基金」に積み立ててから、寄附者の意向に沿った事業に使うと説明しています。令和6年度にふるさと納税を財源に使う事業は119事業・約17億円で、分野別では子ども・子育てと教育が7.7億円、酪農・水産・商工観光の振興が5.0億円、自然環境の保全が1.6億円、高齢者と障がい者の支援が1.4億円です。
町は令和5年度に「子ども・子育て応援基金」をつくり、ふるさと応援基金から20億円を積み替えました。令和6年度からは、この基金で小中学校の給食費を無償にし(令和6年度の予算で9,510万円)、子どもの医療費の助成を18歳まで広げています(同5,000万円)。令和7年度の予算では、給食費の無償化に1億1,900万円、高校生までの医療費の助成に5,979万円を、この基金から充てています。2025年には、物価高の影響を受ける事業者や農業者などの負担を軽くするため、寄附金を財源に水道料金を3か月分減免しました。
町の財政に何が起きたのか
町の決算で歳入に占める寄附金の割合は、令和2年度の0.8%から令和3年度に10.3%、令和4年度に24.1%、令和5年度に41.6%、令和6年度に46.5%と上がりました。令和6年度は、寄附金173.8億円が地方交付税の72.5億円と町税の26.0億円を上回っています。歳出では総務費が半分を超え、町は増えた理由に寄附金に伴う関係経費を挙げています。
基金の残高は、令和4年度末の55.4億円から令和5年度末に103.3億円、令和6年度末に149.4億円になり、そのうちふるさと応援基金は31.8億円から107.4億円に増えました。住民1人あたりの積立金は108.7万円で、全国の市区町村の中央値25.7万円の4倍を超えます。将来負担比率は令和2年度の80.0%から令和3年度に68.8%、令和4年度に31.7%と下がり、令和5年度からは算定上の負担がない「−」です。町はその理由を、ふるさと応援基金の増加などで、返済に充てられる財源が将来の負担額を上回ったためとしています。令和6年度の実質公債費比率は11.1%(全国の中央値7.6%)、財政力指数は0.31(同0.44)でした。
町は令和6年度の決算の概要で、労務単価の上昇などで公共施設の維持管理にかかる経常的な費用が増え続ける一方、一般財源の総額は伸び悩んでいるとして、財政構造の硬直化を懸念しています。町長は令和8年度の行政執行方針で、ふるさと納税のルールが厳しくなって運用の難しさが続くとしたうえで、使い道の情報を発信し、特産品の認知度を高めていくと述べました。全国の並びは1人あたりの受入額が多い街、受入額が多い街、令和2年度から受入額が伸びた街に載せています。
出典: 受入額・件数・費用・使途(令和7年度)は総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」(令和8年度実施、各年度の受入額と件数は平成20年度から。https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/archive/ )、人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日、https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/jinkou_jinkoudoutai-setaisuu.html )、令和6年度の決算と全国の中央値は総務省「市町村別決算状況調」(https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/r06_shichouson.html )によります。1件あたりの寄附額、全国順位、伸びの倍率と並び、件数の増減は、全1,741市区町村の受入額と件数から当サイトで計算しました。制度は総務省「平成27年度税制改正」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/topics/20150401.html )、「ふるさと納税指定制度における令和元年6月1日以降の指定等について」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20190514_02.pdf )とその別紙(https://www.soumu.go.jp/main_content/000619119.pdf )、令和5年総務省告示第244号(https://www.soumu.go.jp/main_content/000889285.pdf )、令和6年総務省告示第203号(https://www.soumu.go.jp/main_content/000956052.pdf )を参照しました。町の説明は別海町「ふるさと納税」(https://betsukai.jp/gyosei/furusato/ )、「これまでのふるさと応援制度の実績」(令和2年度以前 https://betsukai.jp/gyosei/furusato/furusato_jisseki/ 、令和3年度以降 https://betsukai.jp/gyosei/furusato/furusato_jisseki/7096/ )、返礼品等の区域内において生じた価値の割合に係る一覧表(https://betsukai.jp/resources/output/contents/file/release/698/86620/2026_kokuji_3gou_ichiran.pdf )、財政状況の公表(https://betsukai.jp/gyosei/seisaku/zaisei/jokyo/ )にある令和3・4年度の予算の概要、令和2〜6年度の決算の概要、令和2・3・5年度の主要施策の成果、令和6年度の財政状況資料集、令和2〜5年度の健全化判断比率、広報別海(2017年11月号 https://betsukai.jp/resources/output/contents/file/release/1743/12397/kouhou1711.pdf 、2024年4月号 https://betsukai.jp/resources/output/contents/file/release/5916/65078/kouhou2404.pdf 、2025年5月号 https://betsukai.jp/pr-info/00kouhou/kouhou/2025/05/kouhou2505.pdf ほか、2020年2月・7月号、2021年2月・4月・6〜8月号、2025年4月・8月号、2026年4月号。https://betsukai.jp/kouhou/ )、町のプレスリリース(2021年12月8日 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000090610.html 、2021年12月29日 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000090610.html 、2022年6月8日 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000090610.html 、2023年10月19日 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000013.000090610.html 、2026年8月14日 https://www.atpress.ne.jp/news/1718244 )です。報道は北海道新聞(2026年7月31日、https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1345924/ )です。いずれも2026年9月29日に確認しました。
ほかの読みもの
この記事は総務省の公開資料をもとに書いています。控除の適用は一人ひとりの事情で変わるので、具体的な金額はお住まいの市区町村の案内が確かです。


