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根室市のふるさと納税は、なぜ176億円から減ったのか

根室市のふるさと納税は、なぜ176億円から減ったのか

2026-09-29 更新

令和7年度の受入額が122.6億円・55.3万件で全国10位だった北海道根室市。2015年6月に返礼品を始めてから令和4年度の176.1億円、令和5年度と令和7年度の減少と市の説明、2023年9月に市長が知事へ出したホタテの共通返礼品の提言、費用の内訳、13の基金と市の財政までを、市・北海道・総務省の資料で順にたどります。

令和7年度(2025年度)のふるさと納税の受入額で、北海道の根室市は122.6億円を集め、全国の市区町村で10位でした。件数は55.3万件、1件あたりの寄附額は22,189円で、全国の市区町村の平均22,185円とほぼ同じです。受入額が最も多かったのは令和4年度の176.1億円(全国3位)で、令和7年度はそこから30.4%減りました。同じ3年間に全国の市区町村の受入額は37.2%増え、全体に占める根室市の割合は1.8%から0.9%になっています。市の人口は21,918人(令和8年1月1日)で、令和6年度の決算では歳入462.8億円のうち寄附金が147.0億円、31.8%を占めました。

2015年6月からの年表

市は制度ができた平成20年度から寄附を受け付けていましたが、平成26年度までの受入額は毎年1,500万円に届いていません。返礼品を送り始めたのは2015年6月です。当時の長谷川俊輔市長は2016年6月の市議会で、広報の見直し、インターネットでのクレジットカード決済、記念品の種類を増やしたことを挙げ、それまでの7年間は寄附者の98%が60歳以上だったのに対し、40代以下が76%になったと説明しました。平成27年度の受入額は12.9億円(5.7万件)で前年度の約400倍になり、全国20位です。市はこの年度を、ふるさと納税への「本格参入」の年と呼んでいます。2016年2月には総合政策部に専任の推進員を2人置き、6月に記念品が300品まで増えると1人を加えました。2017年7月には市で「地方創生とふるさと納税サミット」を開き、2018年にはJR花咲線を残すためのクラウドファンディング型の寄附に20,281人から3.0億円が集まっています。

受入額は令和元年度に65.9億円で全国5位、令和2年度に125.5億円で初めて100億円を超えて3位になり、令和4年度の176.1億円(82.9万件)まで増えました。毎年のように寄附する人は、市の報告で令和2年度の16.7万人から令和4年度の28.2万人になっています。

年度 受入額 全国順位 できごと
平成26年度(2014) 326万円 808位
平成27年度(2015) 12.9億円 20位 6月に返礼品を始める
平成28年度(2016) 33.1億円 10位 記念品が300品に
平成29年度(2017) 39.7億円 8位 ふるさと納税サミットを開く
平成30年度(2018) 49.6億円 12位 花咲線の応援に3.0億円
令和元年度(2019) 65.9億円 5位 指定制度(通常の指定)
令和2年度(2020) 125.5億円 3位 初めて100億円を超える
令和4年度(2022) 176.1億円 3位 件数も82.9万件で最多
令和5年度(2023) 125.5億円 6位 ホタテの共通返礼品を提言
令和6年度(2024) 146.9億円 6位
令和7年度(2025) 122.6億円 10位 10月からポイント付与の禁止

平成20年度からの受入額に、その年の出来事を重ねると次のようになります。

受入額と出来事(平成20〜令和7年度)
050億円100億円150億円200億円6月に返礼品を始める記念品が300品に指定制度が始まる初めて100億円を超える176.1億円で最多夏の駆け込みホタテの提言9月に寄附が集中10月からポイント禁止平20平21平22平23平24平25平26平27平28平29平30令元令2令3令4令5令6令7全国順位808位20位10位8位12位5位3位3位3位6位6位10位
050億円100億円150億円200億円12345672021222324252627282930元234567全国順位808201081253336610平成令和
  1. 平成27年度 6月に返礼品を始める
  2. 平成28年度 記念品が300品に
  3. 令和元年度 指定制度が始まる
  4. 令和2年度 初めて100億円を超える
  5. 令和4年度 176.1億円で最多
  6. 令和5年度 夏の駆け込み、ホタテの提言
  7. 令和7年度 9月に寄附が集中、10月からポイント禁止

令和5年度に減った理由を市はどう説明したのか

2015年から2025年までの国の制度と市の動きを並べると、次のとおりです。

制度の変化と根室市の動き(2015〜2025年)
2015年2016年2017年2018年2019年2020年2021年2022年2023年2024年2025年制度・全国2015年4月ワンストップ特例が始まる控除の枠は1月から約2倍2023年8月24日中国が日本産水産物の輸入を止める2024年6月ポイント付与の禁止を告示2019年6月指定制度が始まる根室市は通常の指定2023年10月付随する事務も5割の費用に2025年10月ポイント付与の禁止を適用根室市2015年6月返礼品を送り始める2022年4月〜2023年3月176.1億円で最多2025年8〜9月8〜9月に寄附が集中9月は前年の約5.7倍2020年4月〜2021年3月初めて100億円を超える125.5億円2023年9月8日ホタテを共通返礼品にと知事に提言制度・全国根室市2015年2019年2020年2022年2023年2024年2025年2015年4月ワンストップ特例が始まる控除の枠は1月から約2倍2015年6月返礼品を送り始める2019年6月指定制度が始まる根室市は通常の指定2020年4月〜2021年3月初めて100億円を超える125.5億円2022年4月〜2023年3月176.1億円で最多2023年8月24日中国が日本産水産物の輸入を止める2023年9月8日ホタテを共通返礼品にと知事に提言2023年10月付随する事務も5割の費用に2024年6月ポイント付与の禁止を告示2025年8〜9月8〜9月に寄附が集中9月は前年の約5.7倍2025年10月ポイント付与の禁止を適用

令和5年度の受入額は125.5億円で前年度より28.7%減り、件数は35.8%減の53.2万件でした。全国の市区町村の受入額は15.5%増えています。総務省はこの年の10月から、ワンストップ特例の事務など募集に付随する費用も5割の基準に数えるようにしました。市長は2024年1月の市議会で、2023年を、制度の改正に伴う夏の駆け込み需要、物価高のなかでの日用品への人気の集中、ホタテ応援の特需が重なった年と報告しています。総合政策部長は、これらが7〜9月に重なって夏に寄附が集まった一方、根室市への寄附は例年10〜12月に集まるため、水産物が中心の根室市は「競争力が弱かった」と答弁しました。特定の品目に大きな影響が出たわけではない、という分析です。

ホタテを道の共通返礼品に、という提言

中国が2023年8月24日に日本産水産物の輸入を全面的に止めると発表したあと、石垣雅敏市長は9月8日、根室振興局長を通じて鈴木直道知事に政策提言を出しました。加工していない殻付きの北海道産ホタテを、道と道内の市町村に共通の返礼品にするという案で、総務省の告示が定める共通返礼品のしくみを使い、期間は2024年3月末までとしていました。市のページに載せた提言への思いで、市長は、寄附金を募るための提案ではなく、ふるさと納税を使ってホタテの国内消費を広げる「国民運動」だと書いています。9月12日の市議会では、中国へは殻付きのまま送って現地でむいていたので国内ではむく人手が足りないと述べ、両貝のパックに軍手とむき機を添え、寄附者に自分でむいて食べてもらう形を挙げました。

鈴木知事は10月6日の記者会見で、提言を受けて市町村に聞くと、未加工のまま全国に届けることや品質の管理を心配する声があったと述べました。道は第2弾として、ほたて・いくら・うにの「北海道水産物応援セット」などを道の返礼品に加え、知事は根室市の提案をそのまま実施する形にはなっていないと説明しています。市の総合政策室長も12月の市議会の委員会で、提言は「別の形で実施」になったと答えました。

令和7年度の122.6億円

令和6年度の受入額は146.9億円(67.3万件)で、前年度の1.17倍に戻りました。総務省は2024年6月の告示で、寄附にともなってポイントを付ける事業者を通じた募集を、2025年10月から禁じています。市の担当者は2025年10月の市議会の委員会で、例年12月に集まる寄附が9月に早まり、根室市でも7月まではほぼ前年並み、8月は前年の約2.3倍、9月は約5.7倍だったと答弁しました。12月の委員会では、制度の改正がある年は寄附額が下がることもあったとして令和5年度を挙げ、4〜11月の受入額65.8億円がその年の同じ時期の約97%だとして、年度末の見込みを125億円に置いています。

確定した令和7年度の受入額は122.6億円(55.3万件)で、前年度より16.5%減りました。全国の市区町村は4.5%増えています。市長は2026年6月の市議会で、令和5年度を上回る変化の激しい年だったと報告し、毎年のように寄附する人は16万人だったと伝えました。全国の並びは令和2年度から受入額が減った街に載せています。

いまの返礼品の顔ぶれは、楽天ふるさと納税の根室市のページに並んでいます。2026年9月にレビューの多い順で並べると、上位8品のうち3品がずわいがにで、ホタテの貝柱は7番目でした。

根室市の返礼品を楽天で見る→カット済みの本ずわいがに、いくらの醤油漬け、浜ゆでの毛がに、刺身用のほたて貝柱、トラウトサーモン。2026年9月にレビューの多い順で上位だった顔ぶれです。楽天ふるさと納税 PR

122.6億円のうち費用はいくらか

令和7年度に市が寄附を集めるのに使った費用は61.2億円で、受入額の49.9%でした。全国の市区町村の合計は48.0%です。

費用の区分(令和7年度) 根室市 全国の市区町村の合計
返礼品の調達 26.0% 26.6%
返礼品の送付 9.1% 5.7%
広報・決済 0.8% 2.2%
事務など 13.9% 13.6%
うちポータルサイトへの支払い 12.0% 18.1%

割合はいずれも受入額に対するものです。送付の割合は全国の合計の約1.6倍で、ポータルサイトの運営事業者に払った14.8億円は、ほぼすべてが事務の区分に計上されています。市は2025年10月と12月の補正予算の説明で、返礼品の調達に寄附額の20〜25%、発送に10〜15%、合わせて35%を見込み、ポータルサイトの手数料は契約ごとに寄附額の8〜12%、全体で約11%としています。受入額から費用を引いた額は61.4億円で、市の住民がほかの自治体へ寄附して減った住民税(令和8年度課税)は869人分の6,219万円です。5割の基準は募集費用5割の記事で扱い、全国の並びは1件あたりの寄附額が大きい街に載せています。

寄附は何に使われているのか

市は受け入れた寄附を13の目的別の基金にいったん積み立て、そこから取り崩して使います。返礼品や送料、事務の費用は「ふるさと応援基金」から払い、市の説明では令和3〜6年度にこの基金から使った350.0億円の85%が受け入れの費用でした。寄附者が選んだ使い道(令和7年度)は「根室市一任」が75.8億円で受入額の61.9%を占め、次が「ふるさと未来創生に関する事業」の22.7億円です。

返礼品などの費用を除いて事業に使った額は、令和6年度が151事業の38.9億円、令和7年度が145事業の41億円余りでした。令和6年度で最も大きいのは、市立根室病院の周産期医療と地域医療の経費として病院会計に出した18.0億円で、学校給食費の無償化に8,277万円、水産資源を増やす事業への支援に1億1,450万円を充てています。北方領土に隣接する市として、返還運動や北方領土資料館の運営、北方四島交流など11事業に9,168万円を使い、うち5,502万円は北方領土隣接地域振興等基金の事業として行う総合文化会館の整備でした。令和8年度の市政方針は、総合体育館を建てるためにふるさと納税を原資とする建設基金を積み増すとし、市は令和7〜9年度の3年間で47億円を積んで60億円にする計画です。

市の財政に何が起きたのか

令和6年度の歳入で、寄附金147.0億円は市税28.6億円の5.1倍、地方交付税67.1億円の2.2倍にあたり、基金からの繰入金は137.6億円でした。年度末の積立金の残高は平成26年度末の23.9億円から令和6年度末の272.7億円に増え、住民1人あたり124.4万円と、全国の市区町村の中央値25.7万円を上回ります。このうちふるさと納税を原資とする13の基金は令和6年度末に230.2億円で、令和7年度末は249億円余りになったと市長が報告しました。

将来負担比率は、平成25年度の104.0%から平成27年度に83.4%、平成30年度に22.8%と下がり、令和元年度からは算定上の負担がない「−」が続いています。令和6年度末の積立金272.7億円は、地方債の残高192.6億円を上回りました。一方で財政力指数は平成26年度の0.31から令和6年度の0.34で、全国の市区町村の中央値0.44を下回り、令和6年度の実質公債費比率は8.6%(中央値7.6%)です。

市は2025年2月に改めた基金の管理方針で、令和7年度からの10年間の寄附を年平均125億円と見込み、1,250億円を積み立てて1,124.5億円を使い、令和16年度末に355.7億円を残す計画を立てました。令和7年度の受入額122.6億円は、この見込みを2.4億円下回っています。全国の並びは受入額が多い街の一覧に載せています。

出典: 受入額・件数・費用・使途(令和7年度)は総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」(令和8年度実施、各年度の受入額は平成20年度から。https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/archive/ )、人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日、https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/jinkou_jinkoudoutai-setaisuu.html )、令和6年度の決算は総務省「市町村別決算状況調」(https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/r06_shichouson.html )によります。1件あたりの寄附額、全国順位、増減の割合は、全1,741市区町村の受入額と件数から当サイトで計算しました。制度は総務省「平成27年度税制改正」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/topics/20150401.html )、「ふるさと納税指定制度における令和元年6月1日以降の指定等について」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20190514_02.pdf )とその別紙(https://www.soumu.go.jp/main_content/000619119.pdf )、令和5年総務省告示第244号(https://www.soumu.go.jp/main_content/000889285.pdf )と「ふるさと納税に係る指定制度の運用について」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000889286.pdf )、令和6年総務省告示第203号(https://www.soumu.go.jp/main_content/000956052.pdf )を参照しました。市の資料は、根室市「受納状況」(https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/sougouseisakubu/shousikataisaku/16/1609.html )、「寄附金の使い道」(https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/sougouseisakubu/shousikataisaku/16/1561.html )、「寄附金の活用状況」(https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/sougouseisakubu/shousikataisaku/16/879.html )、「『ふるさと納税』で根室を元気に」(https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/sougouseisakubu/shousikataisaku/16/4411.html )、政策提言のページ(https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/sougouseisakubu/shousikataisaku/16/11284.html )と政策提言書(https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/3/seisakuteigen.pdf )、「地方創生の推進等に関する基金管理【10か年方針】」(2025年2月、https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/3/250214_kikinkanrihoushin.pdf )、市政方針(令和8年度、https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/2/R8shiseihousin.pdf )、「令和6年度 決算のポイント」(https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/material/files/group/8/aaaaaaaaa.pdf )、平成25〜令和6年度の財政状況資料集(https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/soumubu/zaisei/yosankessan/kessan/zaiseijyoukyou.html )、健全化判断比率(https://www.city.nemuro.hokkaido.jp/lifeinfo/kakuka/soumubu/zaisei/yosankessan/kessan/kenzenka.html )、根室市議会の会議録(平成28年3月1日、6月15日、令和3年6月15日、令和5年6月20日、9月12日、12月15日、令和6年1月29日、6月18日、令和7年1月28日、6月17日、10月15日、12月19日、令和8年6月16日。https://ssp.kaigiroku.net/tenant/nemuro/SpTop.html )です。北海道の対応は知事定例記者会見(2023年10月6日、https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/tkk/hodo/pressconference/r5/168149.html )と北海道水産物応援ページ(https://www.pref.hokkaido.lg.jp/ss/krs/168518.html )によります。楽天の返礼品の並びは、2026年9月28日に取得した楽天市場のデータです。いずれも2026年9月29日に確認しました。

ほかの読みもの

この記事は総務省の公開資料をもとに書いています。控除の適用は一人ひとりの事情で変わるので、具体的な金額はお住まいの市区町村の案内が確かです。