
焼津市のふるさと納税は、なぜ3年続けて100億円を超えたのか
2026-09-29 更新
令和6年度に119.1億円を集め、令和7年度は114.2億円・76.9万件で全国11位だった静岡県焼津市。2014年10月の返礼品の開始から、2017年の通知への対応、2019年に指定を4か月に限られたこと、ネギトロとマグロの返礼品、ポータルサイトの手数料を「決済」に入れた費用の内訳、寄附金基金と市の財政までを、市議会の会議録と市・総務省の資料で順にたどります。
令和7年度(2025年度)のふるさと納税の受入額で、静岡県の焼津市は114.2億円を集め、全国の市区町村で11位でした。件数は76.9万件で全国6位、1件あたりの寄附額は14,858円で、全国の市区町村の平均22,185円を下回ります。受入額がいちばん多かったのは令和6年度の119.1億円(80.0万件)で、令和5年度から3年続けて100億円を超えています。市の人口は134,112人(令和8年1月1日)で、令和6年度の決算では歳入729.0億円のうち寄附金が119.1億円、16.3%を占めました。市は2019年5月の総務省の決定で、ふるさと納税の対象としての指定を4か月に限られた43団体の1つでした。
2014年10月からの年表
市が返礼品を送り始めたのは2014年10月です。中野弘道市長は2024年6月の市議会で、当初は33の事業者と約150の返礼品だったと振り返っています。平成26年度の受入額は2.85億円でしたが、平成27年度は38.3億円(13.9万件)で全国2位、平成28年度は51.2億円で全国3位になり、市は平成28年度にふるさと納税課を新設しました。2016年11月の市議会で市長は、委託せずに課を設けて直営で行い、返礼品を早く送っていることを選ばれる理由に挙げ、返礼品は1,236品、参加事業者は168社と答えました。平成27年度の申込みの件数では、魚介類と水産加工品を中心とした食品が約76%を占めています。
| 年度 | 受入額 | 全国順位 | できごと |
|---|---|---|---|
| 平成26年度(2014) | 2.85億円 | 21位 | 10月に返礼品を始める |
| 平成27年度(2015) | 38.3億円 | 2位 | |
| 平成28年度(2016) | 51.2億円 | 3位 | ふるさと納税課を新設 |
| 平成29年度(2017) | 26.9億円 | 16位 | 返礼割合を3割以下に |
| 平成30年度(2018) | 31.6億円 | 22位 | 11〜3月に基準に合わない返礼品で16億円 |
| 令和元年度(2019) | 25.6億円 | 24位 | 4か月の指定、10月から1年の指定 |
| 令和2年度(2020) | 52.2億円 | 10位 | |
| 令和5年度(2023) | 106.9億円 | 8位 | 初めて100億円を超える |
| 令和6年度(2024) | 119.1億円 | 11位 | 受入額と件数が最多 |
| 令和7年度(2025) | 114.2億円 | 11位 | 9月にネギトロ大漁祭、10月からポイント禁止 |
平成20年度からの受入額に、その年の出来事を重ねると次のようになります。
- 平成26年度 10月に返礼品を始める
- 平成27年度 全国2位
- 平成28年度 ふるさと納税課、全国3位
- 平成29年度 返礼割合を3割以下に
- 令和元年度 指定は4か月、10月から1年
- 令和5年度 初めて100億円を超える
- 令和6年度 119.1億円で最多
- 令和7年度 9月にネギトロ大漁祭、10月からポイント禁止
2017年の通知と「4か月」の指定
2015年から2025年までの国の制度と市の動きを並べると、次のとおりです。
総務大臣は2017年4月の通知で、返礼割合を3割以下にし、資産性の高い品を送らないよう求めました。2017年9月の市議会で市長は、通知の前々日の3月30日に検討会を指示して返礼割合を3割以下にする方針を決め、4月5日付で資産性が高いと思われる返礼品をやめたと説明しています。市長は2018年2月の市議会で、平成28年度まで増えていた寄附金が返礼率の見直しで減る見込みだと述べています。平成29年度の受入額は26.9億円で、前年度より47.5%減りました。
2018年12月の市議会で市長は、通知には2017年9月までに対応し、自治体間の過剰な競争とは一線を画していると答えています。平成30年度の受入額は31.6億円(22.4万件)でした。総務省は2019年5月14日、2018年11月から2019年3月に返礼割合3割超か地場産品以外の返礼品で2億円を超える寄附を集めた43団体は、指定の期間を9月30日までの4か月に限りました。総務省の資料では、焼津市がこの間に基準に合わない返礼品で受け入れた額は16億円で、静岡県からこの43団体に入ったのは焼津市だけです。どの返礼品が数えられたのかは、会議録と市の資料では確かめられませんでした。
総務省は2019年9月19日、43団体のすべてを10月1日から1年間、あらためて指定しました。日本経済新聞は、焼津市がその後に返礼品を適正化したためと報じています。2020年3月の市議会で市長は、返礼割合は3割以下で、市内で生産・加工・水揚げされた地場産品を送っていると答えました。令和元年度の受入額は25.6億円(全国24位)です。
100億円を超えた年に何が変わったのか
受入額は令和2年度に52.2億円(全国10位)と前年度の2倍になり、令和3年度64.8億円、令和4年度75.7億円、令和5年度106.9億円(全国8位)と増えました。総務省は2023年10月から、募集に付随する事務の費用も5割の基準に数え、熟成肉と精米の地場産品の基準を厳しくしました。市長は2024年3月の市議会で、この改正による寄附額などへの影響はないと答えています。令和5年度の返礼品は約1,600品、事業者は270社です。
令和6年度は119.1億円(80.0万件)で、受入額と件数がともに市のこれまでで最も多くなりました。広報やいづ(2025年8月1日号)は、2年続けて100億円を超えたのは静岡県内で初めてとし、選ばれる理由に、マグロやカツオをはじめとする海産物と市内で造られるビールを挙げています。2025年6月の市議会で経済部長は、水産加工品のなかでもネギトロとツナ缶、最近は漬け魚の人気が高く、寄附者の住所は首都圏が約50%だと答えました。寄附を受け付けるポータルサイトは、2026年9月の市のページで17あります。
2026年9月に楽天ふるさと納税の焼津市のページをレビューの多い順に並べると、上位12品のうち7品がネギトロで、いちばん多い品のレビューは6,117件、寄附額は5,000円でした。
焼津市の返礼品を楽天で見る→小分けのネギトロ、南まぐろと本まぐろの刺身、銀だらの西京漬け、ツナ缶、さつま揚げ。2026年9月にレビューの多い順で上位だった顔ぶれです。令和7年度の114.2億円
総務省は2024年6月の告示で、寄附にポイントなどを付ける事業者を通じた募集を2025年10月から禁じました。2025年6月の市議会で市長は、期限の9月に申し込みが増えると見込み、品切れにならないよう事業者と在庫の管理を進めていると答えています。市は9月1日から、ネギトロを「本市の特産品」と呼ぶ「ネギトロ大漁祭」を開き、アレンジ料理の投票と、11月24日までの寄附者に東京・新宿の店で渡す記念品を用意しました。
2025年12月23日の臨時会で経済部長は、12月に入って寄附が予算の100億円を超える見込みになったとして、寄附の予算を80万件・120億円に引き上げる補正を説明しました。市長は2026年3月の市議会で、2月末で110億円を超えたと報告しています。確定した令和7年度の受入額は114.2億円(76.9万件)で、前年度より受入額が4.1%、件数が3.9%減り、全国の市区町村の合計は4.5%増えました。
114.2億円のうち費用はいくらか
令和7年度に市が寄附を集めるのに使った費用は57.0億円で、受入額の49.9%でした。
| 費用の区分(令和7年度) | 焼津市 | 全国の市区町村の合計 |
|---|---|---|
| 返礼品の調達 | 28.6% | 26.6% |
| 返礼品の送付 | 6.7% | 5.7% |
| 広報 | 0.5% | 0.7% |
| 決済 | 10.1% | 1.5% |
| 事務など | 4.0% | 13.5% |
| 合計 | 49.9% | 48.0% |
| うちポータルサイトへの支払い | 10.5% | 18.1% |
割合はいずれも受入額に対するものです。市はポータルサイトの運営事業者に払った12.0億円のうち11.4億円を「決済」の区分に計上していて、決済の割合は全国の合計の約7倍で、事務などの割合は全国の合計の3割ほどです。2022年6月の市議会で市が示した令和3年度の内訳(決算見込み)でも、費用は受入額の46.4%で、うち決済等が5.8億円(8.9%)、事務は0.7億円でした。区分の使い方の違いは集める街の型の記事で、5割の基準は募集費用5割の記事で扱っています。
寄附の金額帯は、2016年11月に市が示した平成27年度の申込みで、1万円から3万円未満が56%、5,000円から1万円未満が15.4%でした。楽天の上位12品も、11品の寄附額が13,000円以下です。受入額から費用を引いた額は57.2億円で、市の住民がほかの自治体へ寄附して減った住民税(令和8年度課税)は10,767人分の6.7億円でした。全国の並びは1件あたりの寄附額が小さい街と費用のうちポータルへの支払いが小さい街に載せています。
寄附は何に使われているのか
市は寄附から返礼品や送料などの経費を除いた約半額を「焼津市ふるさと寄附金基金」に積み立て、翌年度以降の事業に充てます。使い道は子育て・教育、観光・交流・産業振興、健康、治水・防災・安全安心の4分野で、市長が2025年6月に示した令和6年度の寄附者の指定は、子育て・教育が約23%、観光・交流・産業振興が約6%、治水・防災が約5%、健康が約2%でした。総務省の調査(令和7年度)では、子ども・子育てが26.6億円、安心・安全・防災が6.7億円、健康・医療・福祉が2.1億円、分野を指定しないが69.3億円で、合計は受入額より9.6億円少ない104.6億円です。
令和7年度の予算では、基金から62.9億円を、健康分野に23.7億円、子育て・教育分野に16.9億円、交流分野に15.4億円、治水・防災分野に6.9億円と割り振りました。これまでにターントクルこども館、小中学校22校の体育館の空調、豊田地域交流センターの建て替え、潮風グリーンウォークなどに使い、市長は新病院の建設などに伴う将来の負担に備え、減債基金などへの積立てにも充てていると答えています。基金の残高は令和6年度末で約76.4億円、令和7年度末で約76.0億円の見込みです。
市の財政に何が起きたのか
令和6年度の普通会計の歳入では、地方税208.9億円に対して寄附金が119.1億円で、地方税の57%にあたります。市は2022年6月の市議会で、寄附金は恒久的な財源ではないことを前提に、使い道を特定の分野に絞っていると答えています。
財政力指数は令和6年度に0.81で、全国の市区町村の中央値0.44を上回ります。令和7年度の受入額の上位15の街では、富士市1.00、名古屋市0.98、敦賀市0.85、泉佐野市0.84に次ぎ、京都市と並ぶ値です。将来負担比率は平成24年度の65.5%から平成26年度に40.2%、令和3年度に8.4%と下がり、令和4年度からはマイナスで算定されない「−」が続いています。計算上の値は令和6年度が−30.4%、令和7年度が−23.5%です。実質公債費比率は令和6年度に5.7%で、中央値7.6%を下回りました。
積立金の残高(普通会計)は令和6年度末に284.3億円で、住民1人あたり21.2万円と、全国の市区町村の中央値25.7万円を下回ります。市長は2025年9月の市議会で、一般会計の基金の残高が就任した平成24年度より201億円増えたと述べました。全国の並びは受入額が多い街に載せています。
出典: 受入額・件数・費用・使途(令和7年度)は総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」(令和8年度実施、各年度の受入額と件数は平成20年度から。https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/archive/ )、人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日、https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/jinkou_jinkoudoutai-setaisuu.html )、令和6年度の決算は総務省「市町村別決算状況調」(https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/r06_shichouson.html )によります。全国順位、1件あたりの寄附額、増減の割合、中央値は、全1,741市区町村の値から当サイトで計算しました。制度は総務省「平成27年度税制改正」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/topics/20150401.html )、「ふるさと納税指定制度における令和元年6月1日以降の指定等について」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20190514_02.pdf )、報道資料「ふるさと納税に係る総務大臣の指定」(2019年9月19日、https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01zeimu04_02000078.html )とその別添(https://www.soumu.go.jp/main_content/000645462.pdf )、令和5年総務省告示第244号(https://www.soumu.go.jp/main_content/000889285.pdf )、令和6年総務省告示第203号(https://www.soumu.go.jp/main_content/000956052.pdf )を参照しました。市の資料は、焼津市「ふるさと納税」(https://www.city.yaizu.lg.jp/life/tax/shisan-tokei/other-tax/furusato-tax/ )、「ネギトロ大漁祭」(https://www.city.yaizu.lg.jp/life/tax/shisan-tokei/other-tax/furusato-tax/negitoro.html )、「ふるさと納税ポータルサイト紹介」(https://www.city.yaizu.lg.jp/life/tax/shisan-tokei/other-tax/furusato-tax/portal-site.html )、「寄附金の活用事例」(https://www.city.yaizu.lg.jp/life/tax/shisan-tokei/other-tax/furusato-tax/case-study.html )、広報やいづ2025年8月1日号(https://www.city.yaizu.lg.jp/documents/19965/202508-02-03.pdf )、健全化判断比率(平成24・26年度、令和3・4・6・7年度。https://www.city.yaizu.lg.jp/city-info/finance/kenzenkahandan.html )です。市議会の答弁は、焼津市議会の会議録(2016年11月29日、2017年9月21日、2018年2月21日、12月4日、2020年3月5日、2022年6月17日、2024年3月6日、6月18日、2025年6月17日、9月18日、12月23日、2026年3月4日。https://www.city.yaizu.shizuoka.dbsr.jp/ )によります。報道は日本経済新聞(2019年9月19日、https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50004440Z10C19A9L61000/ )です。楽天の返礼品の並びは、2026年9月29日に取得した楽天市場のデータです。いずれも2026年9月29日に確認しました。
ほかの読みもの
この記事は総務省の公開資料をもとに書いています。控除の適用は一人ひとりの事情で変わるので、具体的な金額はお住まいの市区町村の案内が確かです。


