
紋別市はなぜふるさと納税で全国1位になり、減ったのか
2026-09-29 更新
令和3年度に受入額153.0億円で全国1位になり、令和4年度に194.3億円を集めた北海道紋別市は、令和7年度に124.7億円・59.4万件で全国9位でした。2008年の寄附条例から、申込みサイトの拡大とホタテ玉冷、2023年10月の基準改正と寄附額の引き上げ、中国の輸入停止のあとのホタテ原料の不足、費用、使い道、基金までを、市議会の会議録と市・総務省の資料で順にたどります。
令和7年度(2025年度)のふるさと納税の受入額で、北海道の紋別市は124.7億円を集め、全国の市区町村で9位でした。件数は59.4万件で、1件あたりの寄附額は21,014円と、全国の市区町村の平均22,185円を下回ります。受入額がいちばん多かったのは令和4年度の194.3億円(全国2位)で、1位の宮崎県都城市との差は1.6億円でした。その前の令和3年度には153.0億円・110.5万件を集め、受入額と件数の両方で全国1位になっています。人口19,409人(令和8年1月1日)の市で、令和6年度の決算では、歳入414.6億円のうち寄附金が130.9億円、31.6%を占めました。
2008年からの年表
市は国の制度ができた2008年に「オホーツクの流氷と自然を守る寄附条例」を定め、10月1日から寄附を受け付けています。平成20年度の受入額は509万円(73件)でした。2016年4月の条例の改正で、寄附者が選べる使い道は8つになります。2017年3月13日の市議会で市長は、97品目あった返礼品をさらに増やし、申し込みのできるウェブサイトも増やすと答えました。平成29年度の受入額は10.3億円で、前年度の4.1倍です。
| 年度 | 受入額 | 全国順位 | できごと |
|---|---|---|---|
| 平成20年度(2008) | 509万円 | 211位 | 10月に寄附条例を施行 |
| 平成28年度(2016) | 2.52億円 | 246位 | 4月に使い道を8つに |
| 平成29年度(2017) | 10.3億円 | 76位 | 返礼品と申込みサイトを増やす |
| 令和元年度(2019) | 77.4億円 | 3位 | 6月から指定制度(通常の指定) |
| 令和2年度(2020) | 133.9億円 | 2位 | 件数86.7万件で全国1位 |
| 令和3年度(2021) | 153.0億円 | 1位 | 件数110.5万件も1位 |
| 令和4年度(2022) | 194.3億円 | 2位 | 件数128.9万件で1位 |
| 令和5年度(2023) | 192.1億円 | 2位 | 10月に寄附額を一律3千円上げる |
| 令和6年度(2024) | 130.8億円 | 9位 | 11月末で前年同期の約半分 |
| 令和7年度(2025) | 124.7億円 | 9位 | 10月からポイント付与の禁止 |
平成20年度からの受入額に、その年の出来事を重ねると次のようになります。
- 平成20年度 10月に寄附条例
- 平成29年度 返礼品と、申込みサイトを増やす
- 令和元年度 指定制度が始まる
- 令和2年度 件数で全国1位
- 令和3年度 全国1位
- 令和5年度 10月に基準改正、寄附額を3千円上げる
- 令和6年度 ホタテ原料の不足
- 令和7年度 10月からポイント禁止
何が寄附を集めたのか
令和元年度の受入額は77.4億円で、前年度の3.6倍、全国3位になりました。2020年3月16日の市議会で企画調整課長は、その要因に、PRを続けてきたこと、インターネットの申込みサイトを広げたこと、載せる写真の見え方を工夫したこと、各ポータルサイトの申込みランキングで市の海産物が長く上位に入ったことを挙げています。いちばん人気はホタテの玉冷(冷凍の貝柱)で、ズワイガニのポーションが続き、申し込みの約50%が1件1万円、20%超が2万2,000円でした。
令和2年度は133.9億円で2位、件数の86.7万件は全国1位で、件数の1位は令和5年度まで4年続きます。令和3年度は153.0億円で受入額も1位になり、1件あたりの寄附額は13,843円と、全国の市区町村の平均18,601円より少ない額でした。市長は2023年の市政執行方針で、この1位を、食を中心とした紋別産品の返礼品の質が評価された結果だと述べています。
受け付ける側の体制は、2022年9月5日の市議会の答弁によれば、ふるさと納税係の係長1人と係員2人でした。各サイトの申し込みをRPAで管理システムに取り込み、事業者にはファクスで発注していて、市は11〜12月の繁忙期に向けて発注業務などを外部に委託するとしています。いまの寄附の問い合わせ窓口は株式会社新朝プレスが受け持ち、2025年9月8日の市議会で課長は、契約しているポータルサイトは30あると答えました。
2023年10月の基準改正と寄附額の引き上げ
2015年から2025年までの、国の制度と市の動きを並べると次のとおりです。
2019年5月14日の総務省の決定で、紋別市はほかの多くの団体と同じ1年4か月の指定を受け、返礼割合3割超などで指定を4か月に限られた43団体には入っていません。
総務省は2023年6月の告示で、10月から寄附金受領証明書の発行やワンストップ特例の事務などの費用も、寄附額の5割以内に数えることにしました。2023年9月4日の市議会で市長は、北海道から冷凍で送ると送料が2,000〜3,000円を超えることもあり、5割以内に収めるのは難しいとして、寄附額を引き上げると答えています。課長は8月29日の事業者説明会で一律3,000円の引き上げを提案したと説明しました。件数は前年の月平均約140%で推移し、8月は180%を超えて、市長は改正前の駆け込みの影響が出始めているとしています。共同通信は、市が2023年10月に寄附額を一律3千円上げたと報じています。令和5年度の受入額は192.1億円で、前年度より1.1%少ない額でした。
ホタテの原料はどこへ向かったのか
中国は2023年8月24日から、日本産の水産物の輸入を全面的に一時停止しました。9月4日の市議会で市長は、釧路税関支署紋別出張所の発表として、2022年に紋別港から冷凍の両貝のホタテ2,969トン、14.6億円が主に中国へ輸出されていたと述べています。同じ日に課長は、紋別市には産地を応援する寄附が増えたという手応えは特にないと答えました。
2024年12月9日の市議会で市長は、令和6年度の寄附の申し込みが11月末で約72億円と、前年同期の145億円から約50%減ったと報告しました。市内の事業者から、ホタテの販路が海外に移って加工の原料を確保しにくいと聞いているとして、100億円に届かない可能性にも触れています。令和6年度の受入額は130.8億円(全国9位)、件数は76.1万件で、前年度より受入額が31.9%、件数が38.8%減りました。市長は2025年2月の市政執行方針で、年末の原料不足の中で原料の確保に努めた関係者に礼を述べています。
令和7年度は124.7億円・59.4万件で、1件あたりの寄附額は令和5年度の15,454円から21,014円になりました。2025年9月8日の市議会で市は、10月からのポイント付与の禁止で市場全体が縮めば、市の寄附も減ると見込んでいます。全国の並びは令和2年度から受入額が減った街に載せています。
2020年に市がいちばん人気と答えたホタテの玉冷は、2026年9月でも楽天ふるさと納税の紋別市のページでレビューがいちばん多い品で、その数は8,506件でした。
紋別市の返礼品を楽天で見る→ホタテの玉冷、鮭いくらの醤油漬け、本ズワイガニのポーション、小分けの生食用ホタテ、鮭といくらの親子漬け。2026年9月にレビューの多い順で上位だった顔ぶれです。124.7億円のうち費用はいくらか
令和7年度に市が寄附を集めるのに使った費用は62.1億円で、受入額の49.8%でした。内訳は返礼品の調達27.8%、送付7.5%、事務など14.3%で、全国の市区町村の合計(調達26.6%、送付5.7%、事務など13.5%、全体48.0%)より送付の割合が高く出ています。市の返礼品の募集要領(令和7年度)は、品代と送料の合計が寄附額の35%以下、品代だけで30%以下になるように寄附額を千円単位で決め、送料は市が払うと定めています。
ポータルサイトの運営事業者に払った額は14.7億円(受入額の11.8%)で、全国の市区町村の合計の18.1%より低く、そのうち14.6億円を「事務」の区分に計上しています。区分の使い方の違いは集める街の型の記事で、5割の基準は募集費用5割の記事で扱っています。受入額から費用を引いた額は62.6億円で、市の住民がほかの自治体へ寄附して減った住民税(令和8年度課税)は1,175人分の0.95億円でした。
寄附は何に使われているのか
寄附はいったん「オホーツクの流氷と自然を守る基金」に積み立て、翌年度の事業に充てます。令和7年度の寄附を、使い道の指定ごとに並べると次のとおりです。
| 使い道(令和7年度の寄附) | 指定の件数 | 寄附額 |
|---|---|---|
| アザラシの保護などオホーツク海の海洋環境 | 9.4万件 | 20.4億円 |
| 森林・湖沼・河川などの環境保全 | 3.4万件 | 7.4億円 |
| 市内経済の活性化 | 1.5万件 | 3.3億円 |
| 次代を担う人材の育成 | 4.3万件 | 9.3億円 |
| 医療・福祉・子育て支援 | 7.1万件 | 15.0億円 |
| 人口減少対策 | 1.9万件 | 4.1億円 |
| 公共施設の整備 | 0.8万件 | 1.6億円 |
| 市長が必要と認める事業 | 30.9万件 | 63.5億円 |
| 合計 | − | 124.7億円 |
1件の寄附で複数の使い道を選べるので、指定の件数の合計は寄附の件数と一致しません。令和7年度の事業では、令和6年度の寄附から公共施設等整備基金に30億円、医療確保対策基金に12億円を積み立てました。市は公共施設等整備基金を、築60年近い市役所庁舎の建て替えなどに使うと説明しています。令和6年度には、この基金から北海道立紋別高等看護学院の移転建て替えに8.3億円を充てました。市長は2020年の市政執行方針で広域紋別病院の経営を支えるためにふるさと納税を使うとし、2021年の市政執行方針ではふるさと納税を財源に「子育て応援基金」を設けています。
市の財政に何が起きたのか
市の当初予算の寄附金は、平成31年度の10億円から令和2年度に50億円、令和5年度からは100億円になりました。歳出(普通会計)は平成28年度の182.1億円から令和5年度の461.9億円に増え、令和6年度は411.8億円です。令和6年度の歳入は、寄附金130.9億円に対して、地方交付税が71.1億円、地方税が31.4億円でした。
基金の残高は、平成28年度末の43.4億円から令和元年度末に79.9億円、令和3年度末に167.1億円、令和6年度末に284.4億円になりました。令和6年度末の内訳は、オホーツクの流氷と自然を守る基金107.6億円、公共施設等整備基金70.7億円、医療確保対策基金37.3億円などで、住民1人あたり146.5万円と、全国の市区町村の中央値25.7万円を上回ります。将来負担比率は平成29年度の39.5%から平成30年度に25.7%へ下がり、令和元年度からは算定上の負担がない「−」が続いています。市は2020年9月1日の市議会で、寄附金による基金残高の増加などをその理由に挙げました。財政力指数は令和6年度に0.34で、全国の中央値0.44を下回ります。
市が2026年9月に公表した令和7年度の決算の概要では、一般会計の歳出は397.4億円で、前年度より3.4%減りました。市は令和6年度の寄附が減ったことをその理由に挙げ、今後の課題に、市役所の新庁舎の建て替え、広域紋別病院の経営支援、大型施設の更新で市債の返済が増えることによる実質公債費比率の悪化を並べています。全国の並びは受入額が多い街に載せています。
出典: 受入額・件数・費用・使途(令和7年度)は総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」(令和8年度実施、各年度の受入額と件数は平成20年度から。https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/archive/ )、人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(令和8年1月1日、https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/daityo/jinkou_jinkoudoutai-setaisuu.html )、令和6年度の決算は総務省「市町村別決算状況調」(https://www.soumu.go.jp/iken/zaisei/r06_shichouson.html )によります。全国順位、1件あたりの寄附額、増減の割合、中央値は、全1,741市区町村の値から当サイトで計算しました。制度は総務省「ふるさと納税指定制度における令和元年6月1日以降の指定等について」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/file/report20190514_02.pdf )とその別紙(https://www.soumu.go.jp/main_content/000619119.pdf )、令和5年総務省告示第244号(https://www.soumu.go.jp/main_content/000889285.pdf )、令和6年総務省告示第203号(https://www.soumu.go.jp/main_content/000956052.pdf )、中国の輸入停止は農林水産省「アジアにおける規制措置の変遷」(https://www.maff.go.jp/j/export/e_shoumei/oshirase/asia.html )を参照しました。市の資料は、紋別市「寄附の実績」(https://mombetsu.jp/life/?content=4651 )、「寄附金の使い道」(https://mombetsu.jp/life/?content=4650 )と令和6・7年度の使途の報告(https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20251029_154811.pdf 、https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20260729_102035.pdf )、オホーツクの流氷と自然を守る寄附条例(https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20230116_225423.pdf )、紋別市ふるさと納税(https://mombetsu.jp/furusato/ )、令和7年度の記念品募集要領(https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20250320_195806.pdf )、市政執行方針(平成31年度 https://mombetsu.jp/administration/?content=132 、令和2年度 https://mombetsu.jp/administration/?content=131 、令和3年度 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20230114_134502.pdf 、令和5年度 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20230228_115653.pdf 、令和7年度 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20250318_094941.pdf )、財政状況資料集(平成29・令和元・令和3・令和6年度、https://mombetsu.jp/administration/?content=207 )、令和7年度決算の概要(https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20260929_101233.pdf )です。市議会の答弁は、紋別市議会の会議録(2017年3月13日 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20230126_175032.pdf 、2020年3月16日 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20230126_090712.pdf 、2020年9月1日 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20230126_163143.pdf 、2022年9月5日 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20230125_165948.pdf 、2023年9月4日 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20231121_095332.pdf 、2024年12月9日 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20250221_135727.pdf 、2025年9月8日 https://mombetsu.jp/assets/images/content/content_20251117_114458.pdf )によります。報道は共同通信の配信記事(日本経済新聞、2024年12月11日、https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFC115720R11C24A2000000/ )です。いずれも2026年9月29日に確認しました。
ほかの読みもの
この記事は総務省の公開資料をもとに書いています。控除の適用は一人ひとりの事情で変わるので、具体的な金額はお住まいの市区町村の案内が確かです。


